引きこもりがブラックなピラティスジムでトレーナーになった結果、3ヵ月でギブアップした話③
前回の記事では、引きこもりのわたしが人生で初めてピラティスジムのパーソナルトレーナーの面接を受け、採用されるまでの経緯についてお話しました。
そして今回は、いよいよ実際にジムで働き始める様子について語っていきたいと思います。
期待と不安を胸に始まったトレーナーとしての研修。
このときのわたしは、これから待ち受けている現実をまだ何も知りませんでした。
ピラティスジムのトレーナーとしての研修の日々が始まる
緊張の面接を経て、無事に採用が決まりました。
「本当にわたしがトレーナーになれるんだ。」
そんな信じられない気持ちと、長らく引きこもっていた生活から新しいことに挑戦できる喜びが入り混じったまま、研修の日々が始まりました。
オーナーは、研修でも面接のときと変わらず、爽やかで明るい雰囲気で指導してくださいました。
わたしはもともと身体づくりに興味があり、自身もパーソナルジムに通っていた経験があります。
そのため、研修で新しい知識を学び、それを実践していく毎日はとても楽しく充実した時間でした。
「みずいろさんは、最初から100点を取ろうとしている。そうじゃない、60点でいいんですよ」
「このジムに来てくれて感謝していますし、みずいろさんらしく頑張っていただければ大丈夫です!何も心配していません。」
オーナーの力強い言葉と気遣いに感動し、思い切って挑戦して本当に良かった、と心から思いました。
お客さんのレッスン見学での気づき
研修のなかでは、オーナーの実際のレッスンを見学する機会もありました。
何人かのお客さんとのレッスンを間近で見ていて、気づいたことがあります。
それは、
「みんな、自分ほどいちいち深く考えていないし、気にしていないんだな」
ということ。
もう、本当にこれに尽きました。
オーナーは、わたしがレッスンに同席することについて、お客さんに事前に伝えているわけではなく、レッスンが始まる直前にこうお願いしていました。
「今日、新人が見学させていただいてもよいでしょうか!?」
(え、こんな直前に聞くんだ…。)
もし自分がお客さんの立場だったら、間違いなくお断りしていたと思います。
レッスンでは体の悩みだけでなく、人間関係や家庭についてなどプライベートな話になることもあります。
そのような場に初対面の新人トレーナーが同席することに、わたしなら強い抵抗を感じるからです。
でも、お客さんたちは皆さん、急なお願いにも関わらず「いいですよ!!」と笑顔で快く受け入れてくださいました。
しかもレッスン中も、わたしの存在を気にする様子はほとんどなく、普段通りプライベートな会話を自然にされていたのです。
結婚式を間近に控えて、ダイエットされている方。
田植えのお仕事をしながら、5人のお子さんの子育てをされている方。
以前通っていたジムで極端な糖質制限を課されボロボロの身体になり、それでもあきらめず前向きに身体作りに励んでいる方。
それぞれ全く違う人生を歩んできた人たちでしたが、皆さん、キラキラした笑顔で楽しそうに自分の話をされていました。
その光景を見て、わたしは軽いカルチャーショックを覚えました。
と同時に、自分の警戒心の高さにも改めて気付いたのです。
わたしは、ごく親しい人を除いて、自分のことをあまり知られたくないタイプです。
自分をさらけ出すことにとても抵抗があるし、人前ではプライベートな話もあまりしたくありません。
聞かれてもぼかしたりします…。
それは自分の内面に踏み込まれたくない気持ちもあるし、一番は、否定されて傷つきたくないからかもしれません。
だから、「きっと他の人も同じように感じるはず」と無意識に思い込んでいました。
でも、実際はそうではありませんでした。
むしろ、自分のような考え方のほうが少数なのかもしれないと思いました。
自分が人からどう見られているか。どう思われているか。
いつも、気になってしまう。
そういう、人一倍他人の目を気にし過ぎるところが生きづらさにつながっているんだなと実感しました。
傷つきたくないという、自分を守る気持ちが、自分の世界を小さなものにしているのかもしれないということも。
これは、自分ひとりの殻に閉じこもっていては決して気づけないこと。
研修の時間は、他人を見ることで自分を知ることのできる貴重な機会でした。
妊娠7か月の新人トレーナーさん登場
ある日、いつも通り研修に行くと、オーナーからこんな話がありました。
「まだ紹介してなかったんですが、実は最近もうひとりトレーナーを採用したんです。もともと知り合いだった方なんですが、人手が足りなくて急遽入ってもらいました!」
「今日、そのトレーナーさんが来ます!」
(どんな人なんだろう。)
そう思って待っていると、入り口から明るい髪色の女性が元気よく入ってきました。
「ちーっす!」
第一印象は、とても気さくで明るい人だなあという感じです。
でも、次の瞬間、わたしは思わず目を疑いました。
その女性のお腹は、誰が見ても分かるほど大きかったのです。
(えっ…妊婦さん?)
聞くと、すでに妊娠7か月とのことでした。
トレーナーの仕事は、器具などの重いものを持つことも日常的にあります。
お客さんはダイエット目的の方が多く、体重が80キロ前後の方をサポートすることも珍しくありません。
レッスンの冒頭では、お客さんの身体を支えながらストレッチする場面もあります。
だからこそ、妊娠7か月の方をトレーナーとして迎え入れるというオーナーの判断には驚きました。
(そこまでしなければならないほど、人手不足なのだろうか…。)
面接のときにもうっすら感じていた、オーナーの経営に対する一抹の不安。
それがこのとき、再び胸をよぎりました。
そしてこの後、わたしのオーナーへの印象が180度覆る衝撃的な出来事が起こったのです。
つづく
